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 「環境未来都市づくり」(第2号) 
(2008/02/17発行) 
株式会社和島商業都市研究所
常務執行役員 W・SCM事業本部長
渡 辺 伸 明

事例紹介1;大規模な雪冷房システムを採用した事例
1.紹介する事例の概要
事例紹介の第1回目は、大規模な雪冷房システムを採用した事例を紹介します。雪冷房システムは、室内冷房として、山形県舟形町で95年に世界で初めて設置したと言われています。以来、10年以上経過していますが、全国における雪冷房システムの採用例は、当初の予想より少ないのではないかと考えられます。しかしながら、降雪を夏の冷房利用することで、灯油、電気の一次エネルギー消費量は圧倒的に節減出来ることは、多くの事例で立証されており、今回の対象事例を詳細に検証することにより、今後の雪冷房システム導入採用の参考に供すれば幸いと考え、この事例を取り上げることとします。

対象とする建築物は、中高一貫教育の秋田県立横手清陵学院中学校、高等学校で、建築主は秋田県、敷地面積83,980u、建築面積13,265u、延床面積24,046u、建物高さ17.67m、構造S・SRC・RC・W造、階数は地上3階、竣工が2004年12月、設計は日本設計です。なお、この建物は2007年の第27回AIJ東北建築賞作品賞、第5回環境・設備デザイン賞環境デザイン部門最優秀賞、公立学校優良施設文教施設協会賞(総合部門)、2006年には第7回JIA環境建築賞優秀賞などを受賞しています。

対象事例は、貯蔵用倉庫の用途を除いて、一般建築物における雪冷房システムの採用例では、日本最大級の3,000uの冷房面積です。雪冷房システムの対象は、200人収容のメディアホール、図書館、コンピューター関連施設、給食室、特別教室群などです。


2.雪冷房システム導入の経緯
平成14年に秋田県による対象施設のプロポーザルコンペがありましたが、雪冷房システムは必要条件ではなかったとのことです。しかし、「克雪から利雪へ」という横手市の掲げるスローガンや学校教育方針の中の「地球環境に関する学習を大切にする」の理念に沿った提案として、積極的にプロポーザル案に盛り込み、当選したと言うことです。その後、基本設計と併行して行った5回のワークショップで、計画内容を固めました。その際、秋田県は、ワークショップで出た意見について、採用できる、採用できないという判断を的確に行ったのも計画案をスムーズに作成する要因であったと言うことです。


3.雪冷房システムの概要
氷室は、学校駐車場と、テニスコートに段差がある地形を利用しています。駐車場での降雪を同一平面の氷室に直接押し込める構造とし、氷室上部は段差のあるテニスコートに隣接し、崖地に沿って建てられ、氷室屋上をテニスの観覧席に利用しています。そのため、氷室の背面は土に接していることになり、熱効率上、有利になっています。(図1参照)

雪冷房システムの一般的な方式としては、

  1. 自然対流システム;空気を雪に直接接触させることにより冷却する方式

  2. 直接熱交換冷風循環システム;空気を雪に直接接触させ冷却した空気を強制循環させる方式

  3. 熱交換循環システム;貯蔵した雪の融解水の冷熱を、熱交換機を用いて空気と間接的に接触させ、冷房する方式

  4. 熱交換冷水循環システム;貯蔵した雪の融解水の冷熱を、熱交換機を用いて空気と間接的に接触させ、冷房に使用する方式

の4方式あるいはその混合方式があると言われていますが、対象事例はiv.の方式に該当します。(図2参照)

図1 平面(データ提供;日本設計)
 
図2 対象事例の雪冷房システム(同)


4.建設時に障害となった事項
建設時に最も大きな障害となった事項は、雪冷房システムに関するデータ、ノウハウが共有されていない点であったということです。

具体的には、初歩的事項ですが、雪の重さもわからず、氷室の体積と構造計算に頭を悩ましたそうです。結果的には、積雪時の比重が0.2〜0.3、氷室に押し込んだ後の比重が0.5であることが解明されました。従って、1,800m3の氷室の加重は900tと言うことになります。

次に冷房システムを稼働させる際、どうやって雪を溶かせば効率的かと言う点についても試行錯誤したそうです。当初は、氷室上部から散水する方式を考えましたが、雪が水を吸収してしまい、効率的でないので下から散水する方式を試みたところ、かまくらのように、雪が残ってしまう結果になったと言うことです。また、散水の温度も手探りであったとのことです。結局、下からの散水方式でノズルのピッチを調整することにより効率的な融解を実現しました。これらについてはデータ、ノウハウが共有されていないため、雪冷房システムに実績のある室蘭工業大学の媚山教授に指導してもらい、それぞれの課題を解決したと言うことです。


5.雪冷房システムの検証
このようにして雪冷房システムは完成しましたが、建設後の効果と、経済面での検証を建設後の2004年のデータをもとに見てみましょう。

まず、貯雪量ですが、2月末に氷室に雪を投入し、徐々に減少して9月末には全て融解しました。冷房は6月11日から開始し、9月末まで稼働しました。これは、設計時想定より若干、自然融雪量が多かったようです。原因は2004年夏期が最高気温38.9℃、夏日日数111日、真夏日日数44日であったことが原因であったと言うことですが、概ね設計想定に近い貯雪量の減少スピードでした。(図3参照)

次に、冷房用1次エネルギー消費量の比較では、期間積算冷熱利用量を灯油焚冷温水発生機で冷房した場合と比較すると、約80%の削減効果がありました。(図4参照)

図3 貯雪推移の設計時想定との比較(データ提供;日本設計)
 
図4 冷房用1次エネルギー消費量の比較(同)
 
次に経済面で見てみましょう。雪冷房システムではイニシャルコストが1億1千万円でしたが、半額をNEDOの補助金を受けました。同様の冷房能力をもつ電気冷房システムのイニシャルコストは約3,000万円です。従って、約2,500万円のイニシャルコストの差がありました。一方、ランニングコストでは、1,000tの雪捨て代約50万円が節約できるものの、氷室への貯雪費用も50万円かかったとのことです。電気代の節約は約100万円ですが、一方、氷室の清掃費用も必要です。以上を勘案すると、雪冷房システムによるランニングコストの軽減効果は70〜80万円と言うことになり、対象事例の場合、イニシャルコストの回収には30〜40年かかることになります。


6.雪冷房システム普及拡大のために
以上、対象事例の詳細を見てきましたが、印象としては、雪冷房システムの普及が進まない最も大きな要因は、イニシャルコストが高く、ランニングコストで回収する期間が長いためではないかと考えられます。

しかしながら、環境重視の世界的潮流の中で、環境技術を戦略分野と位置づけその中で雪冷房システムの普及促進を行うべきではないかと考えられます。冷房に関わる1次エネルギーの削減効果は80%になることも実証されています。また、対象事例のように学校施設に取り入れれば、教育効果も考えられます。さらに、話題づくりによる地域活性化に結びつけることも可能です。そのためにも各自治体は率先して公共施設あるいは福祉施設、高齢者施設等に取り入れるべきではないでしょうか。

それでは、雪冷房システムを普及拡大させるために必要と思われる事項をいくつか整理しておきます。

  1. 雪冷房システムに関するデータ、ノウハウの蓄積、共有化
    対象事例の場合、建設時に最も苦労したことがデータ、ノウハウだったことは既に述べましたが、今後、学会等が中心となって基礎データやノウハウ蓄積を行うことは非常に重要と考えます。

  2. 国、自治体等による補助制度の拡充
    対象事例はNEDOの50%補助を受けましたが、今後、さらに補助制度、補助率等の引き上げを検討すべきであると考えます。

  3. イニシャルコストの削減
    対象事例は、900tの蓄雪に加え、上部をテニスの観覧席としたこともあって土中の基礎、スラブ、柱、梁等の構造体を太くしたためイニシャルコストが高くなったと言うことです。今後は、一定の標準的規模によるユニット化や、ノウハウの蓄積により雪冷房システムのイニシャルコスト削減が重要課題と考えます。

  4. 雪冷房システムの効率化
    構造体のコスト削減とともに、雪冷熱をさらに効率的に利用するシステム、設備を研究開発する必用があります。現在は、年間降雪量が6〜11メートルの地域でないと充分な貯雪が出来ないと言われていますが、効率化が進めば暖地積雪地でも雪冷房システムの利用が可能となると同時に、構造体などのイニシャルコスト削減になります。

  5. 共同利用の推進
    他事例ですが、美唄市の産業クラスタープロジェクトとして賃貸マンション(6階、24戸)の全館雪冷房システムを事業化しています。今後は、戸建て住宅など数戸〜数十戸の共同利用による雪冷房システムなどについても実験的な試みが行われても良いのではないかと考えます。

洞爺湖サミットの主要施設である国際メディアセンターでも環境立国日本をアピールするため雪冷房システムを採用することが決定しました。今後は官民一体での真剣な雪冷房システムへの取り組みが環境未来都市づくりにつながるものと考えます。

 





 

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